趣味人(スプーキー)
閑話1「のどかな色」(題材:色鉛筆)
《写真:友人に贈られた水彩色鉛筆/スケッチノート》
|
私から年賀状ないしメッセージカードを受け取ったことのある人は、私が色鉛筆好なことは御存知のことと思います。『大切な人へのメッセージカードには色鉛筆で』と、自己満足ながらそう決めて、もう10年近くになりました。
大切な人への贈り物には、必ず何か手仕事をしないと心が伝わらないような、そんな気がするんですよね。何事にも手間暇を掛けるのが好きな性質(タチ)なのは、そんな所からきているのかもしれません。
そんな私にとって、色を重ねるごとにグラデーションを描く色鉛筆の色合いは、いかにも手仕事的で、性にあっているようです。小さな葉書一枚でさえ、地平線から天頂にかけて移り変わる空の色や、近景から遠景に向けて折り重なるようにうねる丘の緑など、描き込んだらきりがありません。でも、それが楽しいんです。(笑)
普段は何を描くってわけでもないんです。もともと、そんなに飛び抜けて絵が上手いわけでもなく、デッサンだってからっきし。ただ、時々は白いスケッチブックに向かって、「何か描きたいなぁ。」「とりあえず空でも描く?」って。(笑)だから、風景も何も、ただ色があるだけってことが多いです。でもそれだけで、自分にとってはもう十分なんですよね。
最初は、小学校の頃に使っていた色鉛筆を引っぱり出してきて使っていましたが、色鉛筆は絵の具と違って、そう簡単に色を混ぜて作り出すことが出来ないんですよね(注1)、どうしても描きたい色が欲しくなって、とうとう画材屋に通うようになってしまいました。硬筆・軟筆・水彩・油彩、今は本当にたくさんの色の色鉛筆が出回っているんですね。売場を見ていて飽きない程です。だから、文房具売場なんて出掛けたらアウト、何かを買うまで動けません。(笑)
それぞれに無限とも言える色があって、自分の求めるイメージに近い色を選ぶのには苦労します。それと、同じ色と書いてあっても、会社によって微妙に違ったり、ひどい時には生産年次によって色が異なる物さえあります。微妙な染料の配合具合で、色が変わってしまうんでしょう。だから、「これだ!」と思った色は、数本まとめて買ってしまう癖がついてしまいました。不経済なんですが、これも仕方ないんです。よく使う色って、偏っちゃうんですよね。道具と同じで、使っていれば愛着が湧く物で、「これじゃなきゃ嫌だ」というものがどうしても出てきてしまいます。私にもそんな色鉛筆が何本かあって、無くなりそうになると慌てて画材屋に走ることもしばしば。しかし、今までは学生でそんなにお金があるわけでもなかったので、描き始めに買った色鉛筆は1本しか買っていなかったんです。その色鉛筆を大事に大事に使って、いざ買いに行ったときには、もうどこにも売っていない……。そんな色鉛筆が何本もあります。
そんな愛着のある色鉛筆の中で、今、一番大切にしている色鉛筆のセットがあります。パステルカラーの5色の水彩色鉛筆。6年も前の話になるけれど、友人の買い物に付き合った時に、誕生日プレゼントとして買って貰ったものです。長年の付き合いで私の趣味を熟知している友人は、散々私を引き回した挙げ句、さりげなく色鉛筆の棚の前で止まり「5本、好きな色を買いなよ。いつも世話になってるから、プレゼントだ。」と。友人にとっては単なる気まぐれだったんでしょうけれど、いやー、さすがの私もこれには感激してしまいまして(色鉛筆を贈ってくれるなんて、なかなか粋じゃありませんか)、その後もしばらく御機嫌で、ひどく長引いた買い物に付き合った記憶があります。(うーん、単純だなぁ)。
1本200円。色鉛筆にしては当時高価な物でしたが(遠慮する仲ではないので高価な物を選ばせて貰いました)、友人は「お前のプレゼントは安上がりでいいよ。」と笑っていました。その友人はたぶんもう、自分が贈ったことすらも忘れていると思いますが、その短くなった色鉛筆は、今でも年一回、大切な人に年賀状を書くときに使わせて貰ってます。もちろん、その友人に宛てる年賀状にも。
未だに平仮名の名前が張られたものから、つい最近買った新顔のものまで、どれもそれなりの理由があって手に取った縁、その長閑で暖かい色が様々な人に良縁を伝えられるように、これからも大事にこの色鉛筆を使っていこうと思っています。
<注釈 1:最近、色を混ぜる方法を色々と教わったのですが、
色鉛筆独特の風合いが消えるので
あまり多用したくない、という理由もあります。>
|