「冬がまた来る」
_金柑のハネードロップ・林檎のワインソーズ添え_


                             
2006.11.13 mixi


「街をゆき 子供の傍を通る時 蜜柑の香せり 冬がまた来る」

恥ずかしながら、つい最近まで啄木の作と信じ込んでいたのだけれど、
(詩集まで買って「載ってない」とガッカリした)
どうやら木下利玄という人の作とのこと。

相変わらず蜜柑の香りが好きな私は、
冬の到来はすこし、こそばゆい。
独り暮らしになってからは
箱買いで馬鹿食いという訳にもいかなくなったのだけれど、、
いかにも日本人的な冬アイテムとして、
柑橘(あえて蜜柑と書かないわけは後ほど)の香りに懐かしさを抱く。

最近は私が子供の頃ほど、街なかには蜜柑の香りがしなくなった。
むかしは利玄が詠んだように、
子供の傍を通れば、確かに蜜柑の香りがした。
小学校の給食でも、けっこう蜜柑は出ていた記憶があるが、
最近はどうなのだろう。

担任が、給食で出た蜜柑の皮を集めて、
円筒形のガスストーブでマーマレードを作ったことがある。
有志は中身も供出していたけれど、
食い気の多い私は出さなかった。
授業中、ストーブから甘〜い香りがトロリと教室を満たし、
日がな一日ゆっくりと煮られたマーマレードは、
担任が密輸してきたクラッカーと共に、
僕らの旺盛な胃袋にまぁるくおいしく納まった。
今になってみればの、良い思い出。

ストーブと言えば、
昔、実家の居間には火鉢があった。
しかしやはり畳間で火鉢、という訳にもいかなくなり、
茶の間式の石油ストーブに変わることになった。
直径1mちょい、高さ7,80cm程の円筒形のそれは、
茶の間にどっしり鎮座ましましていた。
火鉢の代わりと言うだけあって、
火の上で煮炊きできるような形状で、
いつも薬缶やら鍋から湯気が出ていた。

正月近くなると決まって、金柑を煮た。
金柑に切り込みを入れて竹串で種をほじり出すのだが、
めいめい炬燵でホジホジするにも器用不器用はあるもので、
皮が破れるは、種は取りきれていないは、
それはそれは当たり外れの激しい金柑の蜜煮であった。
煮るときはやはり、金柑の匂いが部屋に優しく広がっていて、
学校から帰って一ツマミ、
夕飯前に一ツマミ、
気が付くと鍋の中身は著しく減っていたりして。
結局また切り目を入れてホジホジすることになるわけで、、、

冬支度の一コマと共に、
私は今も街中に柑橘の香りを求めて、やまない。
     
  
【レシピ】

紅茶やシャンパンに入れる、というバリエーションを考慮して、
洋風の味付けにアレンジしてみました。

一手間加えた分、すこし調理時間は余計にかかりますが、
これ、かなり美味いです(^^)

<金柑>
・金柑は切り込みを入れてから下茹でしてアクを抜く。
・茹で上がったら、冷めるのを待って、
 切れ目から清潔な耳かきで種を抜く(竹串でも良い)。
 これが慣れないと面倒な作業かな。
・アクをとりつつ、
 様子を見ながら予定量の半分の砂糖を加える。
 僕はこの段階でレーズンを追加。
・煮詰まり具合を見て残りの砂糖を投入。
 僕はここで蜂蜜(少量)と
 グランマニエ(オレンジキュラソー/かなりドボドボと)を追加。
・ここから急に煮詰まってくるので、
 木べらで上下を入れ替えながら煮る。 
 照りがでて柔らかくなったらできあがり。

<林檎のワインソース>
 金柑は強烈に甘い印象があったので、
 (実際はそうでもないんですが、記憶の上でそうだった)
 甘味が苦手な人のために、
 別添ソースをこしらえてみました。
 今回、林檎は酸味の少ないサン富士を使用。

・林檎をすり下ろす。
 少し荒み(食感)が残るようにおろしてみました。
・すりおろした林檎を鍋に入れ、
 白ワインで伸ばしながら、好みの分量の砂糖を加える。
 僕は前述の通り、甘味を緩和するために作ったので、
 ほとんど加えず、林檎の甘味に頼りました。
・林檎の香りが立ち上がってきたら、
 水溶きの本葛粉を加えてトロミをつけます。
 コーンスターチや片栗粉でもOK。
 金柑本体が「和」の素材なので、
 ソース素材も和にしようと思い、私は葛にしてみました。
・葛の色が透明になったら火から下ろして、完成!