私の一番大切な曲 
  −パッヘルベルのカノンについて−


改めて全種類のCDを引っ張り出してみました。
いやぁ、出てくる出てくる。
思い入れだけだは半端じゃないからねぇ、この曲は。
昔からバロック名曲集には必ずと言って良いほど登場しているし、
CM・映画音楽でも取り上げることが多いから、
知っている人も多いでしょう。
数年前のエヴァの劇場版で若年層に火がつき、
雨後の竹の子のように廉価版・様々な楽器での変奏版・
カバーの歌謡曲(主に声優)などが大量に出回り、
クラシック音楽としての質はかなり失墜した気がします。
そういう時期に録音されたCDにはろくな物が無く、
手を出して失望した人々は厄災としか言いようがない。
しっかりした録音の「名盤」で耳を肥やして欲しいですね。


「カノン」とは、
一つの主題部を変形して次々に演奏していく技法の名前で、
バッハやら誰やら、
バロック時代の前期に集中的に用いられたものです。
(加法のカノン・減法のカノン・無限法のカノンなど種類は様々)
まぁ、運命律・因果律みたいな宿命的響き
(哲学系の思想の影響)もあるので、
教会音楽をはじめ、
そういった宗教チック(笑)な場でも遜色なく演奏されていたようです。
その技法に先鞭を付けたのが「パッヘルベル」。
宮廷音楽家であり、
教会音楽(特にパイプオルガニストとして著名)
にも名を残しています。
そうそう、バッハのオルガンの師とも呼ばれていますね。
この経歴からも解るように、
今でこそカノンは弦楽四重奏として定着していますが、
編曲される前、
初期の初期ではパイプオルガンを利用した四肢演奏版だった
可能性もあります。
ピアノの連弾(2人のオルガニストによる高低4手演奏)も、
ひょっとしたらオルガンの後継として
弾かれていた時期もあるかもしれません。
いずれにせよ、「超」がつくほど有名な曲、
それだけに、演奏楽器などのレパートリーも多いのが特徴です。
色々な演奏を聴いてみて、
お気に入りを見つけるのもまた、楽しみの一つですね。


購入の際に注意して欲しいのは、
装丁がしょっちゅう変更になること。
「あ、これは新しいな」と思っても、録音年次が同じ物がほとんど。
同じレーベルで同一タイトルが出る場合、ほとんどが再版です。
(グラモフォンなどは指揮者が違ったりというのがよくでますが)
特に駅売り(構内でよく売ってるやつ)の廉価版は要注意。
出版会社までコロコロ名前を変えるからねぇ……。
ちゃんと楽団・指揮者・録音年次をチェックして買いましょう!


☆KANON?それともCANON?
CDによって「KANON」と書かれていたり「CANON」と書かれていたり、
なんなんでしょう? と思っていたら、
ドイツ語では「KANON」英語では「CANON」なんだそうです。
パッヘルベルはドイツ人なので「KANON」と書く方が良いのかな?


《弦楽四重奏もしくは管弦楽曲(王道)》

・WARNER BEST100 CLASSICS「パッヘルベルのカノン」
 パイヤール室内管弦楽団 
 指揮:ジャン=フランソワ・パイヤール
 1968年6月 パリ・リバン聖母教会
 テンポはやや遅めで、
 ストリングスによる弾き技法が強いのが特徴。
 小節単位の区切りが小気味よく、
 最速部でも焦りすぎないところが好き。
 (廉価版だが。質はかなり高い。1000円)

・DEUTSCHE GRAMMOPHON NEW BEST 100
 「バロックコンサート」
 オルフェウス室内管弦楽団 
 1989年4月 ニューヨーク
 テンポはかなり速い。
 ストリングスはそれほど強くなく、
 流れるようにつま弾く。
 ただ、
 最速部の主題が焦りすぎて落ち着かない気もするが、
 そこは名門、程良いところで押さえています。
 (ドイツ・グラモフォンの定番。2000円)

・TELDEC 「バロックフェイバレッツ(2枚組)」
 フランツ・リスト室内管弦楽団
 指揮:ヤーノシュ・ローラ
 正確な録音年次・場所は不明。
 1980年代と思われる。
 テンポはかなり遅い。
 ストリングスもそれほど強くなく、
 全体的な印象は「眠い」が一般的な感想。
 ただし、テンポは曲中で数度変わり、最速部などは流麗。
 数少ないジークとの一体演奏。
 (いわゆる駅売りの廉価版。1500円ぐらいだったかな?)

・ピジョングループ「G線上のアリア バロック名曲集」
 シュトゥットガルト室内管弦楽団
 指揮:カール・ミュンヒガー
 録音年次・場所不明。
 テンポはやや遅く。
 ストリングスもやや弱め(途中からやや強くなる)。
 全体的にぼやけた演奏で、
 大きな主題部のうねりがほとんど無い。
 途中、一ヶ所だけ演奏がブレる所がある。録音ミスか?
 弦の方が少し粗いような気がするけれど
 ……全体的にはよくまとまっている。
 (駅売りの廉価版 1000円)

・PHILIPS
 「アルビノーニのアダージョ・パッヘルベルのカノン」
 イ・ムジチ合奏団 
 1979年7月 スイス、ラ・ショードフォン
 テンポは激遅。
 その上ストリングスが強すぎ、
 小節間に完全な空白域があるため、
 全体的な印象として
 「音がブチブチ切れすぎて美しくない」。
 どっかの高校の音楽部的な演奏には愕然とする。(マジ)
 こういった批評(?)をする時以外は絶対に聞かない。
 (中古の輸入盤のため、正確な値段は不明)

・東芝EMI 「CLASSICAL EVER! one 」
 アカデミー室内管弦楽団 指揮:マリナー
 録音年次・場所は不明
 テンポは速く、ストリングスは使用していない。
 全体的に流れるような名演奏で、
 弦楽の中でもすこし特殊な解釈
 (いわゆる編曲が少し違う変奏版)だが、
 完全な「変奏」ではなく、
 かなり正当な「崩し」を使っている。
 音の強弱も強く、初音と最速部での音の違いは圧巻。
 残念なことに「フェイドアウト」してしまい、
 最後まで演奏が聴けないのが難点。
 (2枚組、値段は忘れました)

・AROMATIC CONCERT WITH NESCAFE
 「くつろぐ」
 コーヒー「ネスカフェ」のおまけについてたCDです。
 もともと僕はコーヒーを飲まないのですが(紅茶党)、
 母と兄は大好きなんですよね。
 で、買ってくるのはだいたい「ゴールドブレンド」。
 ときどき、こういったおまけが付くんだよね。
 ネスカフェ。
 で、「なんか付いてきたからあげるわ。」
 と言われた中に、
 カノンが入ってたのがあったわけです。
 非売品ですが、それなりの演奏です。
 ロンドン交響楽団 録音年次不明
 テンポはやや遅く、
 ストリングスは無いに等しいほど弱いです。
 全体的に穏やかなカノンですが、
 弦楽器にちょっと伸びがないかな?

・カラヤン版(レーベルはドイツグラモフォン)、
 さすが巨匠!と言うべき演奏でした。
 「カラヤン&ベルリン・フィルを買っておけばハズレはない」
 とまで言われた指揮者だけのことはあります。
 ホント言うとね、
 信用してなかったんだよね。カラヤンの噂。
 レパートリーが広すぎるし、
 そもそも交響曲系の人が
 室内楽団系のカノンをこなせるか心配でした。
 でもね、見事なもんでした。脱帽ですね。
 感覚的に言うと、
 オルフェウスに近い早めのテンポで進むんですが、
 弦楽4重奏の特徴をよく引き出してます、
 そのときそのときでの「主役」を、
 他とは明確に区別して引き立ててますし、
 それでいて音負けしているわけではなく、
 しっかりと演奏に絡んでくるあたり、
 見事としか言いようがないです。
 難を言えば、その分、演奏の幅が狭く感じること。
 まぁ、心地よいレベルなんですけどね。
 今までの弦楽4重奏が、
 ジャニーズにありがちな「みんなで合唱」に例えると、
 カラヤン版は
 「明確な音域意識を持ったグループサウンズ」
 ってとこですね。
 個々人によって好みがあるでしょうから、
 多くは書きません。
 
 あとは、ジーク部に続くことを意識しているのか、
 最後の一音に伸びがないので、
 長音に慣れてしまった我々には
 尻切れ蜻蛉に聞こえるかもしれませんね。
 そもそも、ジーク部と連奏で録音されているCDも少ないですし。
 私は容赦なく、この部分でブッ千切りますけどね。(笑)

・大創「クラシック名曲集T
     ファミリーコンサート」
 大手100円ショップダイソーさんに並んでいたCD。
 なんてったって100円。
 ここのCD、安いだけあってかなり雑な録音のが多いのよ。
 もちろん期待せずに買ってみた。
 録音年次も演奏者も何も書いていない。
 会社が違うから初めてのつもりで聞いてみると。
 「あれ? これ、聞いたことあるぞ。」
 よーく調べたら、ピジョングループのと同じ録音でした。
 カノンだけ聴くなら、コレでも良いかもね。
 他の録音も、、、まぁ、100えんだしね。(苦笑)


《変奏板》

↑原版 ↑編集版

・ジョージウィンストン「デイッセンバー」(ピアノ)
 変奏版のなかでは一番気に入っています。
 (というか、この曲がカノンを聴いた一番最初)
 ジョージウィンストン自体の解釈も独特で、
 4重奏用の編曲を単独ピアノで余すことなく表現しています。
 これは本当に見事です。
 アルバムの表題のように、雪の日にしんみりと聴きたい曲ですね。
・この曲は、生きていく中で一生、大切にしたい曲。
 そして、プレゼント癖のある私にとって、
 何よりも最初にプレゼントしたいのがこのCDなんです。
 実際、もう10人以上の人にこのCDを贈っていますし、
 事あるごとに「この曲は良いよ」と言い続けてきた曲でもあります。
 本当は「ディッセンバー」を贈りたかったんですが、
 ジョージのもう一つの代表曲である「Longing/Love」との兼ね合いで、
 多くの人にはベスト版
 「ALL THE SEASONS OF GEORGE WINSTON」
 を贈っています。
 カノンは確かにベスト版にも収録されているけれど、
 フェイドアウト版なんです。
 何度も言うけれど、一番聞かせたいのは「カノン」ですから、
 もし気に入った場合は
 原盤「ディッセンバー」に手を延ばして欲しいですね。

・吉野直子「バロック ハープ」(ハープ)
 1998年4月 ユトレヒト、マリア・ミノール教会
 編曲(SUSANN McDONALD & LINDA WOOD)
 優雅すぎる……。
 テンポはほぼ普通ってところなんだけど、
 ハープ特有の流れるような音移動がかなり見事。
 同編曲のはずの
 「竹松舞/ファイヤー・ダンス」と比べてみて、
 吉野さんの表現力の幅が確かなことは歴然。
 好みによるとは思うけれど、
 一部では過装飾と言う人もいるかもしれない。
 (俺は、この人の方が好き。)
 もともとカノンは
 主題部の音が固定されている上での技法なので、
 ハープだと弾きやすいのかも。
 ファンタジー系の小説読んでる時には填りそう。
 変奏版のなかでは、
 久しぶりに「ぐっときた」演奏です。
 (PHILIPS 2854円)

・竹松舞「ファイヤー・ダンス」(ハープ)
 1997年3月26〜29日 
 秩父ミューズパーク音楽堂
 編曲(SUSANN McDONALD & LINDA WOOD)
 テンポにもちょっと独自の解釈が入っており、
 時々、不必要な溜め(タメ)が入るような気がする。
 技術的には、
 同編曲のカノンを演奏している吉野直子に
 遠く及ばない。
 ただ、シンプルな演奏を聴きたいという人にはお勧め。
 カノンの変奏版としての曲構成が良く聞き取れるので、
 「ああ、ここであれをこうもってくるとああなるのね?」
 (意味不明・笑)
 というような耳の運動になります。
 そう言う意味で結構勉強になりました。(笑)
 (デンオン 2854円)

・井上圭子「バロックファンタジー」(パイプオルガン)
 録音:1990年6月〜8月 福島市音楽堂
 数少ないパイプオルガン版の変奏曲です。
 楽器が楽器だけに録音が難しく、
 やや雑音が混じってしまうのはご愛敬。
 オルガン独特の暖かい空気的な音が優しい名演奏です。
 テンポは早く、
 途中で緩急の入れ替わりにも波があるのが特徴。
 やや演奏に癖が出るのは、
 鍵盤楽器では仕方のないところだけれど、
 気分にムラがある演奏さえなければもっと良かったはず。
 ともあれ、なかなか聞けない演奏です。
 一度は生で聞きたいですね。
 (デンオン 3000円です。)

・エーアールシー
 「CRYSTAL WIND CLASSIC」
 (ガラス・シンセサンプリング)
 ガラスを叩く透明な音を、
 シンセサイザーで音声サンプリングしたもの。
 水の音とか、最近そういうの多いけれど。
 なかなか巧くいった録音の一つだと思う。
 BGM系の軽さが耳障りかもしれないけど、
 まぁ、「企画版」だし。(笑)
 編曲自体はわりと原作に忠実。
 崩し方も、まぁ正統の部類かな。
 雰囲気自体は……結婚式?(爆)
 わりと好きで、よく聴く演奏です。
 (1500円。これも駅売りでした。)

・SLAVA 「AIR」(声楽)
 単純に「声楽」と書いてしまったが、
 歌詞付きとは違います。
 スラヴァさんは、男。
 しかも裏声(カウンターテナー)
 をシンセに合わせているんですが、
 なんとなく「エンヤ」的な、
 肉声オンリーの独特な変奏です。
 口笛演奏入りと、2曲入っています。
 (表題のG線上のアリアも入ってます)
 編曲も崩しまくっているけれど、
 ちゃんと曲を聴けばカノンと解るし、
 どこか機械的?な面もあって、
 かなり不思議な世界です。
 時々、無性に聞きたくなります。
 (ビクターRoux 1200円)

すんません、
 カバー画像無しです。
・BMG 「カノン100パーセント」(オムニバス?)
 パッヘルベルノカノンだけを8曲収録した異色CDです。
 王道の弦楽四重奏から、フルートなどの変奏曲まで、
 幅広くカバーしているのは興味深いです。
 ただ、ジャンルが広すぎることと、
 即興的な(悪く言えば場当たり的な)演奏が多いのは難。
 まぁ、「企画物」だから大目に見よう。
 幅広く楽しみたい人向けかな?
 各曲の解説は割愛。個人的にはフルート版が好きです。
 (BMG ビクター 1748円)
・BMG 「カノン100パーセント・ふぃおーレ」(オムニバス?)
 全曲カノンというCD、第2弾。
 今度はアカペラ、尺八、ハンドベルなど、
 さらにその裾野を広げました。
 このページで取り上げている、
 ジョージ・ウィンストンや井上圭子も収録されています。
 「企画物」の割には、けっこう聴ける曲が多いです。
 お気に入りは、ハンドベルとギターのバージョン。
 (BMG ビクター 2100円)


《カヴァー盤》

・宮村優子「カノン」
 声優さんですね。(爆笑)
 まぁ、超有名どころなので、
 あえてコメントはしませんし、興味もありません。
 編曲自体は忠実です。
 歌い易さ(驚いたことにカラオケに入ってます)も丸。
 ただし、歌ってる人が下手すぎる……。
 泣きそうです。
 (鈍器が飛んできそうなので
  悪口はあんまり書きたくありませんが)
すいません、
 カバー画像無しです。

・戸川純「蛹化(ムシ)の女」
 アルバム「玉姫様」に収録。
 景山民雄のエッセイに登場し、
 彼が感動したというので探し回って買った一枚。
 ああ゛彼の感動ってこういう意味だったのね(苦笑)と、
 かなり死にそうなほど落ち込んだ記憶があります。
 一言で言えば【怖い】。
 歌詞もヤバければ、声も怖い。
 アルバムは一貫して怖すぎます。
 色物なので、
 興味のある人間以外は手を出さない方が無難。
 完全に負けました。
 いや、
 もっと正確に言うと「参りました」って感じ。
 なにかが頭の中で弾け飛んで、
 事象の地平面
(宇宙物理学用語で重力過重地域に於いて
 理論上時間が止まるとされる面)
 から虹色の象が大挙して飛んできたような、
 そんな新しい世界(新境地とも言う)
 を見せてくれたアルバム。
 イーーーーーーイ゛゛゛゛゛゛゛゛゛ーーーーー!!
 (BY:昆虫軍) 
 と叫ぶようにならないうちに止めておきましょう。(爆)
 人生ろくな事が無くなります。
 (ちなみにパセラに入ってます)

・COOLIO「C U WHEN U GET THERE」
 数種のアルバムに収録されていますが、
 すべて絶版らしいです。
 私が所蔵しているアルバムは「MY SOUL」、
 中古屋で手に入れました。
 曲は、完全なソウルでして、
 原曲の面影はほとんどありません。(T_T)
 4年ぐらい前にクラブ系で流行ってましたね。
 これも企画物です。
 驚いたことに、これもパセラに入っていました。


※カノンのサイト紹介※
 【Pachelbel Street】
 ・一度は耳にしたことがあるクラシックの名曲
  「パッヘルベルノカノン」のサイト
  こちらの管理者、塚本さんの
  CD評の質・量は半端じゃないです。
  掲示板でも新たなCD情報をはじめ、
  情報交換が頻繁に行われています。
  オイラも時々、書き込んでます。